クラウド型電子カルテとは? 仕組みやメリットを詳しく解説
クラウド型電子カルテは、インターネット回線を介して提供される「電子カルテ」を利用するシステムのことを指します。
クラウド型電子カルテには、他の電子カルテとはどのような違いがあるのでしょうか。また、クラウド型電子カルテを利用するメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事ではクラウド型電子カルテに関して、様々な特徴やメリット・デメリットを順番に解説していきます。
目次
クラウド型電子カルテとは?
まずは、クラウド型電子カルテとはどのようなものかについて解説します。
電子カルテの普及により、従来の紙カルテに記載していた情報が電子的に管理されるようになりました。クラウド型電子カルテは、個人でも利用される「クラウド」と同様の機能を、医療機関で使われる「電子カルテ」のサービスで利用するというものです。
そもそも「クラウド」とはどのような概念か、電子カルテがクラウドの要素を持つとどのようなメリットがあるか、そして他の電子カルテとの違いは何かについて解説します。
クラウドとは
現代では、様々な場面で「クラウドサービス」が活用されています。クラウドとは、インターネットを通じて、必要な場面でデータ・情報などのリソースを必要なだけ利用できるサービスのことをいいます。
各コンピュータや社内・院内設置型のサーバーにデータを保管するのではなく、インターネットを経由した「クラウド」に保管するため、利用する各コンピュータにデータを保存していない場合でも、必要なデータやシステムにアクセスすることができるのです。
クラウド型電子カルテの概要
クラウド型電子カルテは、先に解説したクラウドサービスを利用する電子カルテです。
電子カルテは、紙カルテを電子化することで大量の情報をひとつの端末で管理することができる点で大きな進歩でした。しかし、院内サーバーにカルテが保存されている場合、院内ネットワークにある端末以外では、カルテを確認する方法が限定されます。
これに対してクラウド型電子カルテの仕組みは、インターネットを経由してクラウド上にカルテの情報を保存するため、インターネットに接続できれば院外からカルテを確認することができ、利用する端末の選択肢も広がります。加えて、院内サーバーの設置も不要です。
他の電子カルテとの違い
電子カルテを利用するためのシステムには、本記事で解説している「クラウド型」の他に、院内にサーバーを設置して運用する「オンプレミス型」と、クラウド・オンプレミスの組み合わせである「ハイブリッド型」があります。
それぞれの特徴について、以下の表に記載します。
※一般的な内容を記載していますので、これに当てはまらない場合もあります。
クラウド型電子カルテの導入メリット
ここからは、クラウド型電子カルテを導入することでどのようなメリットが得られるか、について具体的に解説します。
クラウド型電子カルテの導入には、単に「データを各端末に保管しなくてよい」というだけではなく、他にも様々なメリットがあります。
インターネットを経由することにより、端末の種類や場所を限定せず、院内にサーバーを設置する必要がないことによるコストの削減、障害・災害対策などが代表的なメリットです。
院外に端末を持ち出せる
クラウド型電子カルテを導入する大きなメリットのひとつとして、「院外に端末を持ち出せる」という特徴があります。
院外で電子カルテを利用する場面として、往診・在宅医療の提供や院内ネットワークの外にある薬局・診療所など、患者の医療情報が必要とされるケースは少なくありません。
このような場面において、クラウド型電子カルテの「院外に端末を持ち出せる」という特徴はメリットが大きいのです。
サーバー設置不要のため導入コストが低い
オンプレミス型の電子カルテを利用する場合には、カルテの情報を保存しておくデータをサーバー内に格納し、院内に設置する必要があります。
こうした情報インフラを設置する際には、通常外注のシステム会社へ委託するケースが大半ですが、サーバーが必要な場合には、サーバー機器のリースあるいは購入、設置作業、配線作業などが発生するために大きな導入コストが発生します。
クラウド型電子カルテの場合には、これらサーバー設置に関わる初期費用を削減することができます。
クラウド上サーバーによる障害・災害対策
クラウド型電子カルテのメリットには、障害・災害対策もあります。
院内に設置したサーバーにカルテ情報を保管するオンプレミス型の場合、火災や落雷、地震などの災害の際にはカルテの情報も滅失してしまいます。災害でカルテや医療記録が滅失すると、患者への医療提供に支障をきたす危険性があります。
クラウド型電子カルテは、カルテの情報は院内ではなく、インターネットを経由してクラウドサービスのデータセンターへ保管するため、病院そのものの災害や障害がカルテ情報の滅失に直結しにくいという特徴があります。
デバイスフリーである
オンプレミス型電子カルテのシステムを活用する際には、専用のデバイスを利用するというケースも珍しくありません。
デバイスに制約がある場合、すでに院内にコンピュータやタブレットなどの機器があるにも関わらず、利用する場所に専用のデバイスを導入しなければならないなど、余分なコストがかかるという問題点があります。
クラウド型電子カルテの多くは、専用の機器ではなく一般的なコンピュータ、タブレットやスマートフォンにも対応しており、デバイスフリーに利用できるという点が大きなメリットです。
地域連携・多職種間連携
医療においては、地域医療連携や多職種間連携も重要な課題です。
クラウド型電子カルテでは院内利用だけではなく、訪問看護・遠隔診療などの多職種間連携や、地域医療での情報確認・共有ができるため、業務の効率化が実現できます。
オンプレミス型の電子カルテで発生しやすい、ベンダーの独自仕様による連携の障害がクラウド型電子カルテでは発生しにくい点もメリットといえます。
オンプレミス型 | クラウド型 | ハイブリッド型 | |
サーバー | 院内設置が必要 | 不要 | 院内・クラウド併用 |
利用端末 | システム対応の端末に制限 | 自由に選択 | 自由に選択 |
利用場所 | 原則院内、外部利用の際は別途設定が必要 | インターネット接続可能であれば場所は問わない | 原則院内、外部利用の際は別途設定が必要 |
セキュリティ | 院内ネットワークへの外部侵入に対する対策のみ必要 | インターネットに接続するため、各端末ごとにセキュリティが必要 | インターネットに接続する場合は、インターネット・院内ネットワーク双方の対策が必要 |
カスタマイズ | 可能 | ほぼ不可能 | 一部可能 |
コスト | 機器設置・リース費用+システム料金+運用費用 | サブスクリプション(月額定額) | 機器設置・リース費用+システム料金+運用費用 |
災害時 | 事前にバックアップの取得、災害後復元が必要 | データセンターに随時保管のため影響は限定的 | 事前にバックアップの取得、災害後復元が必要(バックアップ先が限定される場合) |
他システムとの連携 | ベンダー独自仕様がある場合別途連携処理が必要 | 連携先がクラウド対応の場合はスムーズに連携が可能 | ベンダー独自仕様がある場合別途連携処理が必要 |
クラウド型電子カルテの導入デメリット
ここまで解説してきたように、クラウド型電子カルテには多くのメリットがあります。ただし、クラウド型電子カルテの採用にあたっては、デメリットも同時に検討する必要があります。
クラウド型電子カルテはインターネットを経由して利用するため、インターネット接続が必須となる点や、カスタマイズ性に欠ける点などが挙げられます。
以下では、クラウド型電子カルテのデメリットについての詳細を解説します。
インターネット接続が必須である
クラウド型電子カルテは、インターネット接続が必須です。
診察室に設置するデスクトップ端末で電子カルテを利用する場合には、院内に設置しているインターネット回線を利用することで対応できるケースが多いでしょう。
しかしながら、往診や訪問看護などで利用するタブレットやノートパソコンなどのデバイスでは、別途無線インターネット回線の契約が必要となるケースがあります。
カスタマイズ性に欠ける
オンプレミス型の電子カルテは、ベンダーとの契約や調整によって、システムをカスタマイズできる点が魅力です。
しかし、クラウド型電子カルテのサービスの意義はインターネット回線を通じて均一にサービス提供することにあることから、仕組み上カスタマイズはほとんどできないというデメリットがあります。
その他院外で電子カルテを使用する方法
院外で電子カルテを使用する場合でも、クラウド型電子カルテを利用しないという方法もあります。その方法には、
- 遠隔操作によって院外で電子カルテを使用する
- 院外ノート端末による電子カルテ使用
という方法があります。
これらの方法は、クラウド型電子カルテとは異なる仕組みを利用しています。それぞれの方法と特徴、注意点について以下にて解説します。
遠隔操作による電子カルテ使用
遠隔操作で電子カルテを使用するという方法には、「リモートソフト」の機能を利用します。
電子カルテシステムを利用して、院外から診察室内のサーバーやシステムに直接アクセスし、保存されているカルテの情報へアクセスするという方法です。
リモートソフトを利用するには、遠隔操作を行う端末の回線とサーバー・システムにリモートを受け入れる機能と処理性能が必要です。
院外ノート端末による電子カルテ使用
院外ノート端末による電子カルテ使用の場合には、電子カルテサーバーの情報をレプリカとして作成し、それを持ち出すという方法です。
この場合、インターネット回線が必要なくスタンドアロンで利用できますが、院外で更新した情報を別途サーバーに反映する作業が必要であり、リアルタイムでの更新が不可能です。
また、一時的とはいえカルテ情報を保管した端末を持ち出す危険性も考慮する必要があります。
まとめ
クラウド型電子カルテの利用には、院内のみならず院外診療・看護、地域連携や災害対策などにも多くのメリットがあります。
ただし、カスタマイズ性についてはオンプレミス型電子カルテが一歩優位と考えられます。
クラウド型電子カルテの導入を検討する場合には、メリット・デメリットについて比較した上での決断が最善といえます。
ぜひお気軽にご相談ください
ゼロトラストの構成要素に欠かせない統合的なID管理を実現します。
\詳しいPDF資料はこちら/
資料ダウンロードはこちら\お見積りや導入のご相談はこちら/
お問い合わせはこちら