総務だからできる、
従業員に喜ばれるワークフロー導入
多種多様な業務を扱う総務部門。とくに稟議や申請業務の対応に多くの時間を割かれていませんか。本記事ではワークフローを導入することで効率化する例をご紹介します。
総務の業務は、人と人、部署と部署、経営層と現場部門、社会と会社をつなぐとても幅の広い業務です。そのために多くの人が「困ったら総務に相談すれば何とかなる」と考え、頼ってしまっているのではないでしょうか。総務の方から多く聞かれるのが、稟議や申請書に関するお悩みです。
- 過去の稟議書を探してほしいと頼まれるが、整理されていない
- 書類の保管場所が不足し、場所の確保に奔走している
- 承認がどこで止まっているかを聞かれて、自分の業務に集中できない
ここでは、そんな悩みを一気に解決するワークフローと、ワークフローを電子化するためのワークフローシステムを導入する場合に気をつけたいポイントについてご紹介します。
目次
ワークフローとは
ワークフローとは、業務の流れを意味します。組織で行う業務は多くの場合、複数の人や部門の処理や作業を経て完了しますが、その一連の流れを示したものがワークフローです。
組織での業務を円滑に、かつ正しいプロセスで業務を行うためには、書式の決まった書類を活用したり、社内でルールを定めるなどして無駄なく漏れなく業務が進むように管理することが大切です。
組織が小さいうちは、自分や自分の部署がかかわるすべての業務プロセスに目が届き、管理もできますが、組織が拡大し従業員が増え、業務プロセスが複雑化すると、冒頭で述べたような問題が生じます。これらを解決するために利用されるのがワークフローシステムです。
ワークフローシステムとは
1点注意が必要なのは、専用のシステムでない付帯型のワークフロー機能は、申請フォームや経路に機能的な制限があったりオプション費用が必要な場合が多いことです。そのため、人事管理システムや経費精算システムを導入している場合でも、ワークフローシステムを導入している組織は多くあります。
総務がワークフローを活用するメリット
紙の稟議や申請書を利用している場合は、ワークフローシステムを用い電子化すると、総務はもちろん、従業員にもメリットがあります。ここではそのメリットについてご紹介します。
メリット1:社内ルールに沿った運用ができる
承認者や承認部門がどこか、決裁条件は何かなどルールが複雑化する場合、誤った手順で承認されて、あとで監査で問題になる可能性も否定できません。そのような問題を防ぐためには従業員への継続的な教育が必要となりますが、すべての従業員に周知し遵守させるのは、骨が折れる仕事です。
ワークフローシステムであれば、あらかじめ承認ルートが設定できるため、承認プロセスでの誤りが起こりにくくなります。従業員は設定されたルートに従って申請承認すれば良いため、総務への問い合わせ自体も減ることが期待できます。また、社内規定で定められた適切な承認プロセスで運用されるため、内部統制の観点からも有効と言えるでしょう。
メリット2:従業員からの問い合わせ対応の時間を大幅に削減できる
総務にとっては日常的に扱っている業務でも、従業員からすれば年に数回しか発生しない業務も多くあります。その場合、総務へ「この申請のテンプレートはどこにあるのか」、人事や経理など業務の管轄部門へ「この申請はどうやって書けばよいのか」などの問い合わせが入り、対応に時間を要します。逆に、問い合わせをせず誤った方法で申請や承認が進められてやり直しになり、結果的にさらなる時間を要することもあります。総務、従業員どちらにとっても非効率となり、ストレスにもなります。
ワークフローシステムがあれば、申請書のテンプレートは1か所に保管できますし、書き方の説明やそもそも誤った情報を書かないように選択肢を用意するなどの対応が可能であり、問い合わせの時間を大幅に削減できます。
また、書類が今どこにあるかは常にワークフローシステム上で可視化されているため、申請者自身が把握することができ、「あの書類は今どこを回っているか」など残念な問い合わせもなくすことができます。
メリット3:書類の保管場所に困らない
紙ベースの書類の場合、保管場所の確保は悩みどころです。保管場所自体の費用もかかりますし、保管スペースを維持するための整理も定期的に行う必要があります。また、社内ルールでは保管文書は最終承認されたもののみとする、と決まっていても各部署で途中経過の書類を保管していたり、原本のほかにPDFで保管したりと、ルールで決めた以上の量の書類が保管されるため、物理的な倉庫だけでなくサーバーの容量も圧迫します。
ワークフローシステムがあれば、データを一元管理するため書類保管のための倉庫は必要ありません。各部署で必要以上のデータを保管することもなくなります。オンプレミス型のシステムでは社内でサーバーを用意する必要がありますが、最近増えているクラウド型のシステムでは、サーバーの用意も管理も必要ありません。
全社的にワークフロー化できる業務5選
ここからは、実際に総務が管理・関与する業務のうち、どんな業務がワークフローシステムでの運用に適しているかを書類ベースでご紹介します。これからご紹介する業務が電子化できれば、管理部門はもちろん、申請する側の従業員にもメリットがあります。
1.稟議ワークフロー
例)購入稟議書、採用稟議書、契約稟議書 など
稟議書は、多くの場合複数の部署を経て最終決裁されます。稟議にかける内容によって関係部門が変わったり、経営への影響(予算金額など)によって最終決裁者が変わったりします。決裁者や決裁条件によって異なるテンプレートを使用する場合、誤ったテンプレートを選んでしまった場合に途中まで進んだのに差し戻しになる可能性もあります。そこで、テンプレートはなるべく増やさずに、申請の条件によって自動的に経路が変わる(分岐する)ような設定にすると申請者は迷わずに済むでしょう。
また、関係者が増えると承認が途中で止まって稟議書が行方不明になることがあります。その場合、探すのは総務の方であることが多く、できれば時間を割きたくないという声をよく聞きます。ワークフローシステムであれば、今どこで承認待ちか、申請者が確認することができるため、探す作業がなくなります。申請者にとっても、進捗を随時確認できるため業務の見通しを立てやすいでしょう。
決裁まで完了した後は、稟議書と添付ファイルを保管する必要がありますが、ワークフローシステムであれば総務担当者による保管作業も、あとから探す手間も省くことができます。
2.設備関連ワークフロー
例)会議室利用申請書、備品貸与申請書、車両点検報告書 など
利用するもの(設備・備品)、時間、管理責任者や利用目的が必須です。利用できるものは決まっているため選択式にして、占有時間や利用実績を一覧で見ることができれば、予約の状況確認や実績の調査に活用することもできます。
3.勤怠管理ワークフロー
例)休暇届、休日出勤届、テレワーク申請 など
日時と、理由など少しの記入欄があれば十分かと思います。申請状況などのデータを集計や分析に活用するためには、項目は自由記入ではなく形式が統一されるように選択式にすると管理しやすいですね。
これらの申請は多くの従業員が使うため、個人用パソコンをもたない現場の従業員も利用できるように、スマートフォンやタブレットに対応しているとよいでしょう。
4.人事関連ワークフロー
例)休職届、扶養家族変更届、給与振込申請書、社宅入居申請書、資格取得申請書、通勤災害届 など
全従業員が利用する可能性があるため、可能な限り選択肢方式にすると親切です。また、内容はプライバシーに関わることも多いため、直属の上司には申請したことを知らせたいが内容のすべては見せたくないという場合には、人事の担当者以外には情報の一部をマスキングするとよいでしょう。これは、紙での申請や機能が限られたワークフローシステムでは実現できない機能です。
5.経費申請・精算ワークフロー
例)出張申請書、物品購入申請書、経費精算書、支払依頼書 など
経費精算システムに付帯する場合がありますが、複数の承認ステップがある場合や、入力の項目数が多かったりマスターデータの活用が有効な場合は、ワークフローシステムで運用体制にあったワークフローを作るとよいでしょう。金額が必須の項目となるため、自動計算機能が利用できるワークフローシステムが有効です。また、金額によって承認者が異なる場合、条件分岐が作成できるとさらに使い勝手のよいものになるでしょう。
総務主導のワークフロー導入で注意したい3つのポイント
ここまで、ワークフローシステムを導入することのメリットや実際の利用例について解説しました。ワークフローシステムを活用すれば、紙の運用では不便に感じていた点や総務の業務負荷が大きかったことも軽減できるのではないでしょうか。また、従業員にとっても業務が効率化したりプライバシーが守られるなどのメリットもあります。
ここで、ワークフローシステムの導入を検討する場合、注意いただきたい点についてお伝えします。
1.「簡単 導入」の意味を理解する
世の中には多くのワークフローシステムがあります。簡単に導入できるという製品もありますが、何が簡単かをよく理解しましょう。簡単に始めることはできたものの、メンテナンスや変更が難しいという悩みを伺うことがあります。細かな機能は各社によって異なりますので、たとえITの専門知識が必要なく導入できるとしても、運用のことまでよく考えるならば情報システム部門に相談するのが賢明です。
2.アカウントや組織情報の管理方法を理解する
ワークフローシステムにおいては、利用者に適切な権限を設定することが必要です。総務部門のみで設定ができるのか情報システム担当者の権限が必要か理解し、早めに情報システム部門に相談しましょう。
3.自社のセキュリティ要件を理解する
最近のワークフローシステムは、クラウドサービスが主流です。サーバーを用意する必要がなく「簡単に」導入できるため、情報システム部門の助けを借りなくても利用開始できてしまうこともありますが、導入した後にセキュリティ的に問題が見つかる場合があります。情報の漏洩やデータに不具合が起きてからでは遅いので、導入する前のできるだけ早い段階で情報システム部門に相談しましょう。