業務改善のステップとは?
ツール導入やDXを目的としないための手順
組織において「業務改善」に取り組むことになったとき、デジタル化やツール導入の検討から始めてしまってはいませんか?「業務改善」の目的は、業務フローや業務プロセスを改善し、生産性の向上や労働環境の改善を目指すことであり、デジタル化やツール導入ではありません。 今回は、業務改善を正しく進めるための手順をご紹介します。
目次
業務改善に取り組む目的とは
多様化する働き方や人手不足で、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは急務となっています。業務改善を進めるにあたっても、DXの枠組みの中で取り組む機会は多いことと思います。しかしながら、DXの効果を最大化するためには、「デジタル」の側でなく、「トランスフォーメーション」の側に軸足を置くことが大切です。つまり「デジタル」は、業務フローや業務プロセスを改善する手段のひとつにすぎないのです。
目的はあくまでも「業務改善」であって、「デジタル」すなわちITツールの導入は手段であることを忘れないようにしましょう。
ITツールを導入して、この場所にいなければできない、この人でなければできないという制約をなくした上で、「業務改善」を行うからこそ、働き方に柔軟性が生まれ、属人化からも解放されるのです。
業務プロセスと業務フローの違い
「業務改善」とひとことでいっても、業務にはさまざまな粒度があります。 組織によって認識に違いはあるかもしれませんが、概ね、業務プロセス>業務フロー>業務に分けられるのではないでしょうか。 業務改善はどちらも対象となりますが、どの範囲(規模)を対象にするか関係者で共通認識を持つことが大切です。
詳しくはこちらの記事でも解説しています。
►業務プロセスと業務フローは何が違う?双方を理解して業務改善を実現しよう!
今回は、小さな粒度である業務フローにおける業務改善の進め方について解説します。
業務フロー改善の準備ステップ
ツールの導入を念頭に置いてDXを考えると、そのツールでできることを業務にあてはめようとしてしまいがちです。一度ツールのことは忘れ、業務フローにおける業務改善の準備を始めましょう。
業務改善の準備ステップ |
業務フロー改善で注目すべきポイント
たとえば新しい受注が発生したとき、営業担当者はその情報をどこに書き込んで、誰と共有しているのか。その受注情報を、誰がいつ受け取るのか。情報を受け取った後工程ではどんな業務が発生するのか。業務と業務をつなげる情報に注目し、その流れを追いかけてみましょう。情報がどのような形態で受け渡されるのかも、同時に注目したい点です。
業務フロー改善の最初のステップ「ムダをさがす」
例えば発注書は、取引先・商品・納期・金額など多くの情報が含まれています。それらの情報は、Excelやシステムに登録され、関係者で情報共有・管理されるケースが多いのではないでしょうか。複数のシステムに入力すると手間がかかるだけではなく、入力ミスも発生しやすくなります。システム間を連携させることで、情報入力の回数を減らせないかと考えてみましょう。
このような視点で課題を抽出したら、
実際にどこから順に改善に取り組むのか決める必要があります
課題に優先順位をつけ、予算や期間に合わせてまず取り組むべき課題を絞り込みましょう。それぞれの課題について、何がどのようになったら達成とするのか、ゴールも決めましょう。
業務フロー改善の検討ステップ
ステップ1:課題の明確化
準備が整ったら、具体的な実行手法に落とし込んでいきます。ここでも、いきなりツール導入を検討するのではなく、準備ステップで見つけた課題を解決する方法をまずは検討しましょう。
また、このステップではECRS(排除、統合、再構成、簡素化)の原則を活用するといいでしょう。ECRSの原則とは、Eliminate、Combine、Rearrange、Simplifyの頭文字を取ったもので、生産現場の業務改善手法として使われているものです。
無駄な業務を排除し、似た業務を統合し、業務の順序を見直し、簡素化できる業務は簡素化することで業務フローを改善することができます。
ECRSの原則
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E
排除(Eliminate) |
慣習的に行なわれている資料作りなど、業務の無駄を見つけて排除します。 |
C
統合(Combine) |
別々の部署でほとんど同じ情報をシステムに入力するなど、似た業務を見つけて統合 |
R
再構成(Rearrange) |
順番を入れ替えることで効率化できる業務を見つけ、適切な順番に正します。 |
S
簡素化(Simplify) |
紙の書類の整理など、手間と時間がかかる業務をデジタル化するなど、簡素化します。 |
情報共有のために日報を書かせて、定例会議で発表しあっているとします。それをそのままオンライン会議にしても、会議に時間が使われることに変わりはなく、無駄をなくせたとは言えません。
- 会議そのものが無駄ではないか
- 似たような情報共有が他でも行われていないか
- 会議実施のタイミングは妥当か
- より簡素な情報共有で代えられないか
ステップ2:ツール選定
ツール選定に当たっては、組み合わせた際の全体的な効果を考えるといいでしょう。目的をすべてカバーする製品に出会える可能性は、あまり高くありません。全体をひとつの製品でカバーすることにこだわりすぎると、不必要に多機能な製品を導入してしまうことにつながりかねません。複雑なシステムを使いこなせない従業員が出てきたり、不要に高いコストを負担したりと悪影響をもたらす恐れもあります。