その承認プロセスで、大丈夫?
内部統制の観点で気をつけるべきこと
株式会社東京商工リサーチが2024年1月30日に公開した情報によると、2023年に「不適切な会計・経理」(以下、不適切会計)を開示した上場企業は前年から9%増えており2年連続の増加を示しました。不適切会計が生じる理由には、役員や従業員による不祥事や、担当者によるミスが考えられます。理由はどうあれ、不適切会計を開示した企業は、重い罰や信用の失墜といったペナルティを課せられるでしょう。
内部統制の担当者や、社内監査部に近い立場の人のなかには、この手のニュースを耳にして自社は大丈夫かと心配する人もいるでしょう。特に社内の「承認プロセス」で改ざんやずさんな処理が行われていれば、すぐにでも是正しなければなりません。
しかし、内部統制に沿った承認プロセスを整備するには、何から手を付けたらいいのかわからないのが現状ではないでしょうか。本記事ではそんな担当者に向けて、内部統制の観点から見た承認プロセスについて解説し、具体的な取り組みであるワークフローシステムの導入について取り上げます。
目次
内部統制の目的
内部統制とは企業活動を行ううえで従業員が遵守すべきルールを整備し、そのルールを守りつつ、業務を効率的に回す仕組みのことをいいます。金融庁は内部統制の目的として下記の4つをあげています。
- 業務の有効性および効率性
組織の利益を正しく上げるため、役員・従業員一人ひとりの効率性を高める仕組みが必要です。 - 財務報告の信頼性
信頼の失墜につながるような虚偽記載があれば大問題です。改ざんできない仕組みや、正しい業務フローが求められます。 - 事業活動に関わる法令などの遵守
教育などを通じて、従業員に法令順守を徹底するとともに、法令違反が起こりえないシステムなどの利用が重要です。 - 資産の保全
事業に必要な資産を取得したり、使用する際に正しい手続きや承認が行われていることを担保する必要があります。
本記事では、これらの4つの目的を達成するうえで重要な業務「承認プロセス」について解説していきます。
承認プロセスとは
承認プロセスとは、どの役職者がどの権限で何を承認するかを定めた一定のルールです。具体的には、有給休暇の取得や備品の発注などの社内手続きや、稟議の申請に関するルールです。主に費用が発生するような申請では、定められたフローに従って上司や決裁権者による承認が行われます。
この承認フローは金額や内容によって、申請に関わる部署や人数に違いがあり、企業によっては独自のルールを設けている場合もあるでしょう。承認が必要な申請が増えればそれだけ管理する対象も増えるため、管理部門の負荷も増加しがちです。
内部統制の観点で見た、承認プロセスのチェックポイント
ここからは内部統制の観点で見た、承認プロセスのチェックポイントについて解説します。
- 証跡が残るのか
- 改ざんの危険性はないか
- 承認処理がずさんにならないか
- 後から追跡が可能か
- データ消失の危険性はないか
の5点について見ていきます。
ポイント1:証跡が残るのか
承認プロセスで重要なのが、いつ誰がどの処理を行ったのかという証跡を残すことです。仮にその申請をきっかけに何かトラブルが起こった場合、証跡をもとに誰が処理をしたかを調べる必要があります。
紙ベースの申請の場合では、ハンコを使って承認を示すことがありますが、時間まで記録しているケースは少ないのではないでしょうか。また否認や差し戻しといった場合でも証跡を残しておくことが重要です。
ポイント2:改ざんの危険性はないか
前述した証跡ですが、後から改ざんができないようにしなければなりません。もし改ざんができる仕組みになっていれば、不祥事を起こした人間が証拠を隠すために書き換えることができてしまいます。また、タイムリーに証跡を残すことも重要です。後から記憶をたどって書面に残す方法だと、記憶違いなどで正しい情報を残せないことが懸念されます。
ポイント3:承認処理がずさんにならないか
ずさんな承認処理には大きく分けて2つのことが考えられます。1つは、別の人間によるなりすましです。ハンコによる承認の場合、上司の指示があってもなくてもハンコさえあれば誰でも押せてしまいます。別の人間の名前で処理ができる仕組みは排除しなければなりません。もう1つは、決められた承認フローが守られないことです。正しいフローで処理されているかを確認できる仕組みが求められます。
ポイント4:後から追跡が可能か
承認プロセスで生じた証跡や、実行された業務や取引を後から追跡できる仕組みが必要です。紙の申請書をファイルに綴じていく方法もありますが、これだと何かがあったときに探し出すのに時間がかかってしまいます。ただ記録を残すだけでなく、残した記録を効率的に追跡できる仕組みが必要です。
ポイント5:データ消失の危険性はないか
実際に行われた申請処理や、それに伴う証跡が記録されますが、それらのデータ消失の危険性がないかチェックする必要があります。紙ベースの管理であれば、どのような場所で保管するかが重要ですし、電子データで行う場合はバックアップ処理などを考える必要があります。
具体的な取り組み方法とそのメリット・デメリット
ここからは、上記チェックポイントに対応するためにどのような方法があるかを、メリット・デメリットを含めて紹介します。
方法1:人力で取り組む
人力で取り組むとは、定めたルール・規定に準拠し承認プロセスが行われているか、チェックシート等を用いながら、人手をかけて内部統制することを意味します。人力で取り組んだ場合、アプリケーションやシステムを導入する必要がないため、初期投資はかからず、従来通りに行います。
ただし承認プロセスの種類や件数が増えてくると、人力による取り組みには限界がくるでしょう。証跡を残すのに時間がかかってしまったり、書類をファイルに綴じて保管するといった業務が増えてしまいます。そのため、本業を圧迫してしまい従業員の生産性を悪くしてしまうこともあるでしょう。
方法2:システムを用いて取り組む
システムを用いて取り組むメリットは、効率化が図れるというものです。証跡を残すにしても、わざわざ担当者が処理を行わなくてもシステム側が自動で対応してくれます。また電子データで保管されるため場所をとることもありません。さらに検索機能がついていることが多いので、後から追跡するのも簡単です。
ただし、システムを導入する費用や従業員に使用方法を教育するコストが発生するため、計画的に導入していくことが求められます。
ワークフローシステムを勧める理由
人力で取り組む方法と、システムを用いて取り組む方法について紹介しました。ここからは承認プロセスを効率的に内部統制に沿った形にするために、ワークフローシステムをおすすめする理由について解説します。
理由1:証跡を残せる
紙やメールベースの承認プロセスで、承認や差し戻しといったアクションの度に証跡を残すのは困難です。いくらルールを決めたとしても、人の手が絡む以上ミスも発生してしまいます。
ワークフローシステムであれば、わざわざ設定をしなくても自動で証跡を残すことができます。管理部門や担当者が新しい承認プロセスを構築しても、証跡に関して気にする必要はありません。また残された証跡を検索するシステムもあるので、後から追跡する場合にも便利です。
理由2:改ざんを防げる
ワークフローシステムを利用する場合は、IDとパスワードを使ってログインをする必要があります。そのためハンコのように誰かの代わりに処理をするのは困難です。また、記録された証跡は一般ユーザーの目の届かない所に保管されるため、改ざんされようがありません。
内部統制に対応した承認プロセスの構築に「Gluegent Flow」を勧める理由
ここまでワークフローシステムが承認プロセスの整備に役に立つ理由を解説しました。ここからは、ワークフローシステムのなかでも内部統制に沿ったプロセス整備に役立つ「Gluegent Flow(グルージェントフロー)」について紹介します。
複雑な承認プロセスが簡単に設定可能
申請内容によっては、承認プロセスが複雑になる場合があります。例えば、複数人が合議をして認否を決定したり、多数決で決定される場合もあるでしょう。また、この条件であればスキップをするという場合も考えられます。
Gluegent Flowであれば、プログラミングの知識がなくてもこれらの複雑な承認プロセスを設定可能です。これまでのメールや紙ベースで行ってきた承認プロセスをワークフロー上で設定できるので、社内ルールを変更せずにシステム化できます。
簡単に可視化できる
Gluegent Flowには可視化をサポートするデータの出力機能が豊富に備わっています。データ1件ごとの出力ができたり、検索キーワードや担当者を指定して検索した結果の一覧を出力することもできます。また特定のタイミングで、ExcelやGoogleスプレッドシートに情報を出力することも可能です。
まとめ
内部統制に沿った承認プロセスを整備するためのポイントや、具体的な方法についてご紹介しました。内部統制に沿った形にするためには、人力ではかなり困難であることがご理解いただけたのではないでしょうか。一方で、ワークフローシステムの有効性は理解できたものの、どのように進めればいいかわからないという方もいらっしゃるでしょう。
そのような方は、弊社が提供している「WEB完結できる!社内申請電子化の進め方」をご覧ください。また具体的に進めていきたいとお考えの方は、内部統制に沿った承認プロセスに関わった実績が豊富な弊社まで、ぜひお気軽にお問い合わせください。