稟議規定の見直しにより、単純な電子捺印システムではなく、多機能で課題解決が可能なクラウド型ワークフローを選択。文書管理の問題解決と同時に、申請業務の整理による大幅な業務効率化に成功。
株式会社サンゲツは、壁紙やカーテン、床材などの内装仕上材を扱うインテリア企業です。創業170年を誇り、インテリア業界の最大手として知られる同社は、エクステリアや空間デザインなどを扱うグループ会社を保有し、海外でも事業を展開されています。働き方改革や文書管理への取り組みから始まったペーパーレス/ワークフロー導入という動きから、COVID-19の影響も受けて、全社的にさまざまな業務のデジタル化運動にシフト。クラウドワークフローの導入をきっかけに、申請・承認業務のデジタル化やペーパーレス化のみならず、年間1,600時間もの業務短縮が見込まれるなど、業務効率化に成功されました。
総務部主導で全社的なDX推進のプロジェクトがスタート
総務部長 新山 明伸 様: 総務部の中には、いわゆる総務課と広報IR課、そしてESG(*)推進課の3つの部署があり、私は総務部長として全体を見ています。
総務部 総務課 長谷川 美智子 様: 私は2018年に総務部に着任し、主にプロジェクト系に携わっています。その中で文書管理の一環として、ペーパーレス・ワークフローの導入というところで、今回のプロジェクトを担当しました。
今回の導入に関わったメンバーは、総務部以外では情報システム部からシステム一課長の石田、そして担当者の高木の2名が参加しています。最初からこのメンバーでスタートしたわけではなく、情報システム部の2名は、当初はどういったシステムがいいのか、という視点でオブザーバー的な立場で参加してもらっていました。実際にワークフロー導入を進めるのと同時並行で、全社デジタル化運動が進み、その中の3本柱の1つとして、総務課で取り組む文書ワークフロー化がプロジェクトとして設置されました。そこから、改めて文書管理グループとして、システム部の2名と総務の新山と私という体制で動いています。
(*)ESG: 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの観点から、より良い経営をしている企業を表す指標
COVID-19によって一気にデジタル化が加速。稟議自体を見直し、ペーパーレス化だけではなく業務効率化の要件を満たすGluegent Flow を選択。
新山様: そもそもワークフロー導入という前段に、大きな課題が3点ありました。1つ目は、稟議申請書の在り方です。今まで文書規定がなく、文書の作成者によって書き方が異なり統一感がなかったため、まず文書作成基準書を作成しました。だらだらとした文章ではなくきちんと簡潔な文章でというところから、ナンバリングのルールや記号の付け方まで細かく策定する、そんなところからスタートしました。次に、組織も整って組織階層もある程度増えてきたところで、稟議申請書の規定を進めました。総務だけではなく、経営企画や秘書担当なども交えて「稟議とは?」という議論を経て、ロールや回送の順番などを規定しました。これによって、文書自体とそれを回送する、申請・承認業務の統制化について整備することができました。
2つ目の課題は、紙の文化です。サンゲツは自社オフィスが多く、保管場所に困らない為、厳格な要不要の精査なく保管した結果、倉庫は書類のダンボールの山なんですよ。そういうアナログな課題感があって、そこからのデジタル化というところが今回の問題でした。
長谷川様: あとは働き方改革というところで、紙書類が阻害してるよね、という課題感も持っていました。フレックスやテレワークを導入しても、申請書や書類関係が足かせになっていますという声もたくさんありました。課題感としては、この3つ。そこから、申請・承認業務のワークフロー化という動きが進んだということです。
新山様: このプロジェクトが進んだ理由は、課題感ももちろんですが、やっぱりコロナの影響が大きくありますね。コロナがなかったらまだできてないと思います。あとは、トップ=社長の確固たる指示です。弊社では、捺印のために出社しなければならない、いわゆるハンコ出社の実情がありました。社長もこの状況を認識していたので、そこから指示が出て、押印・捺印関係が最初の発端となって一気にデジタル化が進んだという経緯があります。
長谷川様: 実はコロナ以前に、契約直前までいった電子印鑑のシステムがありました。ただ、稟議そのものの規定を見直すという議論が活発化して改めて検討した結果、Gluegent Flow の方が社内のいろんな課題を解決できる、ということになりました。最初のシステムは、単純な電子印鑑の機能しかなかったので、複雑な経路設定が実現できないなど、いわゆるワークフローには少し機能が不足していました。コロナ禍でデジタライゼーションの方向に要件もシフトしていき、その要件にあうものが Gluegent Flow 採用の決め手でした。
新山様: セールスフォースが元々入っていてワークフローも使っていましたが、紙からのワークフロー化が進んでいなかったのはなぜかというと、セールスフォースの1申請に対する費用感と設定や修正の難しさというところでした。各部門からこの申請書をワークフロー化したい、という要望が出ても、費用もかかるし時間もかかる、じゃあ諦めるか、ということが多々ありました。Gluegent Flow はまず内製ができるということ。簡単に修正できたりワークフロー化できるというところがいいですね。
――当初は、紙の文化での申請・承認業務のペーパーレス化を目的に、文書や稟議申請の統制化からスタート。コロナの影響も大きく後押しとなり、稟議そのものの在り方について見直した結果、単純な電子捺印システムでは課題解決できないことが判明しました。さまざまな自動連携機能で稟議工程を削減でき、専門的な知識がなくても、自社で簡単に作成・メンテナンスが可能で、柔軟に経路が設定できる点などが評価され、Gluegent Flow が選ばれました。
社内体制づくりと、3〜4ヶ月かけて課題の洗い出しとルール整理を実施。年度切り替え時期に合わせてスモールスタートで利用開始へ。
長谷川様: Gluegent Flow を導入したのは2020年の11月です。ワークフロー化については、最初は現場からの反対意見もありましたが、ワークフローを入れることが目的ではなく、これを機に業務も見直しをして、効率の良い方法を決めましょう、という話をしました。紙から移行するにあたって、まずは各部門各部署の担当者を決めて、対象書類の整理整頓から始めました。担当者は現在70名ほどいますが、”稟議申請書”と”それ以外の書類”の2つにわけて、それぞれのチームを設定しました。各チームに対しては定期的にミーティングを行い、Gluegent Flow の説明や仕組みの紹介をしたり、相談を受けたりということをしています。最初に、1ヶ月ほどかけて、どの書類をモデル化していくかという対象書類の整理整頓を行いました。次に、稟議については、支社ごとに独自のルール(経路の回送順など)で運用されていたので、全社統一化を行いましたが、課題の洗い出しとルールの整理で、3〜4ヶ月ほどかかりましたね。
その後、ユーザーに展開したのが今年(2021年)の3月です。3月末には異動発令が出るため、人事総務系の書類からスモールスタートして、移行作業は引き続き同時並行で行っています。その後は、徐々に各部門で優先順位の高い項目から始め、全社的な稟議申請は5月にリリースしました。
実際の移行については各部署の担当者が行い、総務部としては取りまとめとサポートという位置づけになります。対象書類のリスト作成と期限管理や勉強会の開催のほかに、個別案件の相談にのったり、解決できない場合はサイオステクノロジーに確認し共有することを行いました。さらに、公開後は社内周知のため情報発信の部分も担当しています。セールスフォースを使って案内したり、Google Workspace の機能を使って、ワークフローの情報を集約したポータルサイトも作成しました。公開したモデルを一覧化してリンクをつけたり、ちょっとしたTipsを発信したりしています。マニュアルのリンクも置いていて、申請書ごとにここからリンクしています。今はワークフローツールごとに分けていますが、課題の1つとして、何がどこにあるかわからない、どこから申請すればいいかわからない、という話が多かったので、最終的には書類別に分けようと思っています。
展開時には、責任者向けには一度勉強会を行いましたが、申請者向けの説明会は、実は一度もやっていません。責任者からエバンジェリスト的にサポートしてもらったということもありますが、Gluegent Flow は、感覚的に分かるシステムだと思うので、申請者側はあまり心配しなかったというのが正直なところですね。申請者向けには、Q&Aシートを用意して個別の質問に回答することもありますが、各モデルの入力フォームで中間ガイダンス(入力フォームの一部に説明を差し込むための表示のみの項目)を使って、マニュアルのリンクを貼ってありますので、申請するときはまずそこを見てね、というように参照しやすくしています。
――社内で多数の協力体制を確立して活動し、導入前の業務整理も時間をかけて行ったことで、丁寧な課題抽出と段階的な導入が実現できました。また、Gluegent Flow は直感的に操作できる点もポイントで、導入後の申請者へのレクチャーも最小限で済むため、スムーズな移行にもつながりました。
300件もの申請書を半数に集約し、業務工程も半分に削減でき、年間1,600時間の業務削減を見込める成果に!社内を横断する推進活動によりDXに成功。
長谷川様: Gluegent Flow の導入後は、当初300件ほどあった申請書が、移行時に整理整頓したことで業務整理がされて、最終的に半数程度になりました。さらに、稟議の処理に関しては、8工程あった稟議担当者の業務のうち5工程は、Gluegent Flow のスプレッドシート行追加機能やメール送信機能などを使って自動化できています。経路の確認(決裁者や回議者が正しく設定されているか)のチェック機能は自動化が難しいので残っていますが、文書保管に関しても、Gluegent Flow の自動連携機能を使って決裁済みのデータをアウトプットし、印刷業務の部分はロボット化したことで、年間で1,600時間の業務削減を実現できる見込みです。また、人事データのマスターと連携し組織管理を自動化したことで、申請者側も社員情報データを利用して申請できるようになり、さらに便利になっています。
今後の展望としては、セールスフォースと人事系のシステムで使用しているフローのうち、申請者データを取り入れる必要があるものは残して、それ以外は全部 Gluegent Flow に移行する予定です。今後はその移行と、実際に Gluegent Flow を使いだしたそれぞれの部署からワークフロー化したいという要望があがってきているので、そういったものの対応を進めていきます。あとは稟議→捺印申請→契約締結まで一気通貫のモデルを作りたいということも考えています。
ペーパーレス化や社内業務のデジタル化は、ツールやシステムを決めてどう導入して展開していくのか、という点でどこの企業でも課題に挙がる内容だと思いますが、自部署だけでやろうと思わない方がいいと思います。意外と情報システム部門だけが頑張っているという話を聞いたりしますので、まずはその社内体制をどうつくっていくか、ということがとても大事なポイントだと思います。
新山様: 弊社の場合は2020年に発表した中期経営計画の中で、データ活用の高度化による事業基盤の整備を明確に謳っています。それに合わせて、その対応をするDX担当の部署を社長直轄で立ち上げていまして、まず全社的に社長直轄でデジタル化の旗振りがいた、という前提がありました。ここに申請書関係も一緒にやりましょうということで、全社巻き込んだ体制に組み込めたというのが大きかったですね。70名もの協力体制も集めやすかったですし、全社への説明もしやすかった、会社の意向で中期経営計画に則った活動であるということで、明確に指示も出しやすかったということは、好条件でした。一部門だけで旗を振っていたら、今回の成功はなかなか難しかったなと思います。
――サンゲツ社は、中期経営計画という会社の経営方針を社会に示すなかで「事業基盤の整備」を掲げ、総務部や情報システム部だけではなく、社内を横断する推進メンバーが積極的に活動に取り組まれたことで、大きな成果をあげられました。一部署だけではない全社的な協力体制が、今回のDX成功につながりました。