AIを活用したユーザーアシスト機能の初期案と開発を行って
みなさん、こんにちは。せしょうです。
今回は、2025年1月29日にリリースしたユーザーアシスト機能について書かせていただきます。
ユーザーアシスト機能の初期案と正式版の違い、プロジェクトを進めるにあたっての制作秘話などお話ししたいと思います。
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1. ユーザーアシスト機能とは?
ユーザーアシスト機能は、Gluegent Flowを使用しているお客様が抱える課題を解決するための機能です。ユーザーアシスト機能第一弾は、まず課題を3つに絞ってお客様に提供させていただきました。
課題1: 処理すべきタスクの課題
「どの処理を急ぐべきか判断が難しい」。優先度の高いタスク(申請・承認対応)を見極める課題
解決する機能: タスク要約
タスク一覧の画面から、各タスクの情報(申請内容・申請者等)の要約文を生成・表示してくれる機能。
申請フォームなどの入力項目数に依存せず、人が理解し判断しやすい自然な表現で要約文を表示することで、優先度の高いタスクを見極める課題を解決できる機能となっています。
画像1.1: タスク要約_課題
課題2: モデル選択の課題
「どのモデル(申請フォーム・経路)でタスクを申請していいのか分からない」。新入社員や中途社員など、まだ会社に馴染めていない社員がどのモデルを申請すればいいか分からない課題
解決する機能: スマートモデル検索
自然言語で質問すると該当するモデルをを表示してくれる機能。
これにより、表面的な単語の一致だけではなく、概念レベルでの質問に対して、類似性の高いモデルを表示するとともに、どのモデルで申請すべきか説明と一緒に表示されるため、どのモデルを申請すればいいか分からない課題を解決できる機能となっています。
画像1.2: スマートモデル検索_課題
課題3: ITリテラシーの課題
「理想とするモデルの作成に必要なスクリプト生成が難しい」。高度なカスタマイズができない課題
解決する機能: スクリプト自動生成
自然言語で指示した内容に基づき、コードを自動生成してくれる機能。
プログラムの作成経験や知識がある人に頼らなくても、「やりたいこと」を入力することにより、自動的にスクリプトを生成してくれることで、カスタマイズできない課題を解決できる機能となっています。
画像1.3: スクリプト自動生成_課題
2. タスク要約: 初期案と正式版
タスク要約の初期案では、タスクの件名にマウスをホバー(件名の上にマウスポインターを重ねた)際に、要約が出てくるような仕組みを考えていました。
画像2.1: タスク要約_初期案
初期案と正式版の大きな違いとしては、ツールチップから、ダイアログになったことです。
UI/UXの観点において、マウスホバーによるツールチップ表示には、ユーザーの予期していない動作であること、要約の文章量によっては、他タスクが見づらくなるといった様々な課題がありました。
上記以外にも課題があったことで、正式版では、ダイアログで要約を表示する形式になりました。これによって、ツールチップの上記の課題を解決したUIとなりました。
またダイアログにしたことで、今後 要約以外の情報を含めることができたり、複数ダイアログを開くことでタスクの優先度を判断しやすくなるなど、個人的には色々と改善できることが増え、期待していただけるUIの改善だと考えます。
画像2.2: タスク要約_正式版
3. スマートモデル検索: 初期案と正式版
スマートモデルでは、最初に以下のようなUIを考えていました。 色合いが AI側がピンク、 ユーザー側の質問が緑で囲まれており モデルも申請ボタンがレコメンドされたモデルに1つ1つ付いているような見た目でした。
画像3.1: スマートモデル検索_初期案
初期案と正式版との違いとしては、申請ボタンが無くなったことと色使いが大きいと思います。
色はGluegent Flowに合わせた青色と水色を基本としていて、初期案と比べるとGluegent Flowにマッチした色合いになっています。 スマートモデル検索は、現在1つの質問に対して、最大で8件のモデルをレコメンドしてくれる仕組みですが、初期案の申請ボタンがあるままだと、かなりスクロールしないと全て確認できないと言うような課題がありました。それを正式版ではしっかり解決して、水色の範囲をクリックすることで申請画面に遷移できるとともに、見やすさも向上しています。
画像3.2: スマートモデル検索_正式版
4. スクリプト自動生成: 初期案と正式版
スクリプト生成は、当初はブラウザ拡張機能でのリリースを考えていました。一番上のヘッダー部分でスクリプトの種類を指定して行う仕組みで作られています。 UI面は何人ものメンバーで議論しており、現在の正式版のダイアログ形式の元となっています。 (※このブラウザ拡張の実装自体は、ブログでお馴染みの前田さんが一人でぱぱっと実装してくれたものです。 すごい!!)
画像4.1: スクリプト自動生成_初期案
初期案ではブラウザ拡張でしたが、正式版ではGluegent Flowに組み込むこととしました。Gluegent Flowに組み込まれたことにより、最初にスクリプトの種類を選択する必要もなくなり、それぞれの使用できる場所で、スクリプト自動生成ラベルをクリックすることで使用が可能です。これにより、スクリプトの種類の間違いが減り、ダイアログを開きながらお試し実行ができるようになり、ブラウザ拡張で使用した場合の課題を解決できました。
画像4.2: スクリプト自動生成_正式版
ユーザーアシスト機能開発の実現まで
ここでは、今回リリースした3つの機能開発が実現した背景について、軽くお話しさせていただきます。
タスク要約
まず最初に、タスク要約についてです。この機能は役職者の方などのお話を聞いていると出てくる課題をヒアリングした結果実現した機能になります。
私の立場からは最初想像つかなかったのですが、どうも承認・決裁の立場になるとタスク一覧画面が承認・決裁を求めていっぱいになるというお話でした。 確かに、私の立場からすると申請だけなので溜まることはないですが、上司の立場になると色んな方から申請が来るため仕事中に行うのが大変とのことでした。Gluegent Flowには、「至急」ラベルはありますが、申請者が「至急」なだけで承認者たちからすると、実はそんな至急じゃないなんてお話も。 そんな中で、優先的なタスクを見極めたいと言うお話から実現したのが、このタスク要約機能になります。
この機能があればタスクを一々開かなくても、タスク一覧画面で要約が見れるので、タスクをたくさん処理しなければいけない承認・決裁者の方にぜひ使っていただきたいです。
スマートモデル検索
次は、スマートモデル検索についてです。この機能は、私の一押しの機能なのです。
これは、過去に私が挙げた記事を元に実現した機能になります。
その記事は、「Gluegent Flowでどれを申請すれば分からなかったので、AIに聞いてみた」です。 私ごとですが、昨年結婚して人事部に申請が必要になった際、どのモデルで申請すればいいか分からないと言うことがありました。別ドキュメントにまとまっているのですが、そのドキュメントがどこにあるか分からない、担当者が誰か分からないから探すのが大変...
その際に、実現できたらいいなと思って書いた記事でしたが、この機能に対して面白いじゃん!みんな抱えてそうな課題だねと言うような意見をいただき、後押しを受けて実現した機能になります。
きっと私のように悩んでいるユーザーの方がいると思いますので、ぜひ使ってみてください。
スクリプト自動生成
最後に、スクリプト自動生成についてです。Gluegent Flowの強みはなんといってもカスタマイズ性にあります。それを可能にするのが、JavaScriptベースのスクリプト!! なのですが、Gluegentではスクリプトに対しては現在サポート対象外になっています。お問い合わせに対して、できるだけ返答させていただいてはいますが、それでもかなりハードルが高いスクリプト。お客様の声を聞いていると、カスタマイズしたいけどスクリプトが書けない。 サポート対象にしてほしい。作成してくれる機能が欲しいという意見やレビュー、お問い合わせがありました。
そこで、生成AIの登場です。生成AIの強みの一つであるプログラムコードの生成をうまく利用すれば、これまで問題であったハードルの高さを乗り越え、皆さんの指示だけでスクリプトを作成してくれます。
この機能を使って、ぜひモデルをカスタマイズしてGluegent Flowをさらにお客様の好みに変えてください。
皆様が抱えている課題などをヒアリングさせてくださると、このように実現できる機能もありますので、気になっていることなどありましたら、ぜひ教えてください。
ユーザーアシスト機能を開発するにあたって
ユーザーアシスト機能を開発するにあたって活用した生成AIの技術は、元々若手を中心に実施してきたR&Dの経験を活かしたものとなります。また、お客様の要望を聞きリリースしやすい仕組み作りなど、先輩たちの力をたくさん借りて、新しいことにたくさん挑戦したプロジェクトでした。
今回リリースした ユーザーアシスト機能は、実は昨年(2024年)8月にプロジェクトとして始まったものです。β, 正式版リリースとしてかなりスピード感を持ってリリースできたのは、前述のR&Dによる若手の頑張りと新たな仕組み作りで色んな技術と知識を使って一緒に作ってくださった先輩方、チームメンバーみんなの助けがあったのが大きな要因かと思います。
このユーザーアシスト機能はみんなで力を合わせて頑張った甲斐もあり、SIOS Value Awardという社内の賞の中で2024年度の年間最優秀賞を受賞することができました。
またβ版をご利用いただき、フィードバックをくださった企業様、担当者様に感謝申し上げます。今後も、フィードバックいただいた内容を考慮して随時反映させていただき、ユーザーアシスト機能に磨きをかけて行きます。
今後とも、より良いサービスを皆様にお届けできるようSLメンバー全員で頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いします。
まとめ
今回は、ユーザーアシスト機能の初期案と正式版の比較と、開発にあたっての話を書かせていただきました。今回作成したユーザーアシスト機能は、今後も皆さんの意見を伺いながらどんどん改善していきますので、ぜひ率直な意見をいただけるととてもありがたいです。
今回は、生成AIを活用した機能でしたが、生成AIに限らず、皆様をお助けできる機能追加をしていく予定ですので、ぜひご期待ください。
(せしょう)